研究概要 |
本研究では、植物における環境ストレス応答性の選択的スプライシング制御機構を明らかにすることを目的として、シロイヌナズナからストレス応答性SRタンパク質を同定し、それらが関与する選択的スプライシング制御機構の解析を試みた。 これまでに、atSR30およびatSR45aは強光に対して顕著な発現誘導性を示すことを明らかにしている。atSR45aは植物特異的なドメイン構造を有する新規のSRタンパク質である。そこで、スプライソソーム形成におけるatSR45aの役割を検討した。酵母Two-hybrid法によりシロイヌナズナcDNAライブラリーからatSR45aの相互作用因子を検索した。その結果、atSR45a-2は、3'スプライス部位で機能するU2AF^<35>bや、スプライソソーム形成後期に5'スプライス部位で機能するPRP38と相互作用した。BiFCによる解析の結果、atSR45a-2とU2AF^<35>bまたはPRP38と相互作用を示すYFP蛍光が核で検出された。以上より、atSR45aはスプライソソーム形成における基本構成因子を含むタンパク質と相互作用し、スプライシング効率の制御に関与することが示唆された。 さらに、シロイヌナズナ遺伝子破壊株を用いてatSR30およびatSR45aによるスプライシング制御機構の生理的意義の解明を試みた。その結果、atSR45a破壊株では強光処理下でのatSR30の発現量が、atSR45a30破壊株ではatSR45aの発現量が野生株と比較して増加していた。さらに、個々の破壊株では表現型に変化が認められなかったが、二重遺伝子破壊株(WKO sr30/sr45a)は通常条件下で矮性を示した。また、WKO sr30/sr45aにおいて熱ショックタンパク質(HSP)であるHSP70, HSP17.4, およびHSP101の発現量が減少していた。以上より、atSR30およびatSR45aはHSPの発現制御に関わる転写因子の選択的スプライシングの制御に協調的に関与していると考えられた。
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