研究概要 |
シロイヌナズナ種子休眠・発芽に関与するsmall RNA群、特に植物ホルモン生合成・代謝調節に関わるものを同定することを目指し、本年度では以下の点を明らかにした。 1.small RNAの生合成に関わるDicer-like遺伝子群、ARGONAUTE遺伝子群の欠損突然変異体群のうち、dcll,dcl2,ago7で種子休眠が浅くABA耐性の表現型を示す、またこれら変異体では種子吸水後のABA内生量が野生型よりも若干少なく、ABA生合成・代謝に関わるAtNCED9,CYP707A2の発現量も野生型と比べ変化していた。この結果は、種子発芽時のABA内生量調節に対するsmall RNAの関与を示唆している。 2.シロイヌナズナ乾燥種子および吸水種子、また、種子吸水後の胚と胚乳それぞれからsmall RNAの網羅的解析を行い、150から300個のmiRNA候補の配列が得られた。また胚乳由来のサンプルから、AtABA2をターゲットとする新奇miRNA候補が得られている。またその過程で、種子発芽時に胚乳の軟弱化時に細胞壁成分の加水分解に関わるエクスパンシン(EXP)遺伝子をターゲットとする新奇miRNA候補も胚乳由来のサンプルから得られた。ゲノムアレイを用いた解析からAtABA2やEXP遺伝子は胚乳でも発現が確認されている。こうした結果から、胚乳軟弱化のメカニズムにsmall RNAが関与し、ターゲット遺伝子の発現を空間的・時間的に精密に制御している可能性が示唆された。
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