研究概要 |
シロイヌナズナ種子休眠・発芽に関与するsmall RNA群、特に植物ホルモン生合成・代謝調節に関わるものを同定することを目指し、本年度では以下の点を明らかにした。 昨年度、small RNAの網羅的解析で得られた800個の候補配列について、既知のmiRNA配列を検索した結果、miR160, miR165, miR166, miR167, miR390が吸水後の種子全体、あるいは、胚から見つかった。これらのターゲット遺伝子は茎頂分裂組織や根端分裂組織で機能する発生・分化に関わるものであり、種子発芽以前の段階から葉の発生・分化、根の伸長生長の制御機構が作用していることが示唆された。また、AP2転写因子群を認識するmiR172が胚乳サンプルからのみ得られ、そのAP2遺伝子族もまた胚乳で強く発現している事がマイクロアレイ解析で示されており、これら遺伝子が胚乳軟弱化に関与している可能性が予想された。 一方、新奇miRNA探索のために、候補配列のゲノム上にマップされた位置を調べた。その結果、10コピー以上得られた配列のほとんどは、(1)セントロメア付近にあるリピート配列、(2)t-RNAに由来するものであった。また、4コピー以上得られたものには既にアノテーションされている遺伝子のコード領域にマップされるものもあった。こうした配列はmRNAの分解産物である可能性も考えられる。以上の結果から、本研究で行った、20〜30塩基のRNAをクローニングして行った発現プロファイリングではこのような不要な配列を多く含んでしまう事が推測された。
|