本研究では、葉緑体の依存したエンドリデュプリケーションの制御機構を明らかにすることを目的とし、これまでに単離された2種類の因子ILP2およびILP5の解析を行った。本年度はこれら因子について詳細な機能解析を行うために、機能欠損もしくは機能抑制した植物の作成を行い、表現型について解析を行った。 ILP2遺伝子の欠損変異株を単離したが、ほとんど表現型が見られなかった。ILP2には類似遺伝子(ILP2L)があり、冗長性があると考え、二重変異株を作成し解析を行った。二重変異株では弱い生育遅延が認められており、現在のこの二重変異株における核相の変化を解析している。 また、ILP2は葉緑体局在タンパク質であることから、光合成に着目した欠損変異株の解析も同時に行った。光合成に関連するいくつかの表現型について調べたところ、ILP2欠損変異株では、光化学系I循環的電子伝達に異常が認められた。ILP2タンパク質には膜貫通ドメインがあるため、様々な光合成関連タンパク質をチラコイド膜に繋留する役割があると考えている。そこで、ILP2の一部欠失したタンパク質を発現させた植物を用いた解析を行った。その結果、膜貫通ドメインを欠失したタンパク質を発現させた場合、ドミナントネガティブの効果が得られた。この結果は、ILP2のチラコイド膜へのアンカーとしての機能を支持するものである。そこでタンパク質相互作用に関わるドメインを絞り込むとともに、相互作用する光合成関連タンパク質の探索も行う予定である。 ILP5過剰発現により、暗所において光合成関連遺伝子の発現が活性化させることから、転写制御に関わる因子だと考えた。レポーターを用いたin vivo transcription assayを試みたが、転写を活性化能は認められなかった。今後、さらなるILP5の生化学的な機能解析を試みたい。
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