本研究の目的は、哺乳類の排卵酵素を同定することと排卵メカニズムの解明である。生体外排卵培養系の導入が、メダカ排卵酵素同定において威力を発揮したことから、哺乳類排卵酵素の同定においても、同様な系の確立を目指した。以前の実験より、マウス卵巣器官培養による排卵系において排卵が認められていたが、排卵数が少なかったことから、排卵数の増加を目指して至適条件を検討した。また、メダカ同様、マウスのくり抜き濾胞を用いた排卵培養系についても検討を行った。3および8週齢雌マウスにPMSG/hCGを処理し、その後、卵巣を摘出、そのまま、器官培養を行った。また、摘出した卵巣から濾胞をくり抜き培養する実験も試みた。検討した条件は、hCG処理の有無、hCG処理の時間、培養液の組成、添加物の有無、培養環境(培養液中の培養、コラーゲンゲル中での培養、メンブレンインサート上での培養など)の変更などである。その結果、くり抜き濾胞からの排卵は認められなかったものの、卵巣器官培養においては、以前の条件より排卵数に改善が見られた。この条件下で、各種プロテアーゼ阻害剤を添加し、排卵の有無を検討した結果、メタロプロテアーゼ阻害剤の添加時に排卵率が大幅に減少した。この結果は、メタロプロテアーゼが排卵酵素であることを示唆する結果である。今後、さらなる解析を行い、排卵酵素の候補選別を行う予定である。また、現在の条件では、排卵率はそれほど高くなく、また、排卵までの時間が長い(培養後36-48時間後に排卵)という状況である。従って、排卵率や排卵までの時間のさらなる改善を目指して、培養条件の検討も行う。
|