1)遺伝学的解析(母性遺伝変異体の単離) パロモマイシン耐性遺伝子断片(aphVIII)を用いた非特異的遺伝子破壊(タギング)によって得られた母性遺伝変異体BP(Biparental)株について、表現型解析を進めた。SYBR Greenl染色による蛍光顕微鏡観察の結果、BP14は一旦片親の葉緑体DNAのみが消失するが、その後もう一方の葉緑体DNAも消失してしまう変異体で、その原因遺伝子はCa^<2+>依存性ヌクレアーゼをコードするらしいことがTAILPCRによって明らかになった。この遺伝子はRNAiなどの過程に関わると報告されており、片親の葉緑体DNAの保護には、適切な時点でのRNAiによる特定遺伝子(葉緑体ヌクレアーゼ等?)の発現抑制が必要である可能性が示唆された。またBP31株は両方の葉緑体核様体が全く分解されない。TAIL- PCRにより原因遺伝子を解析したところ、ストレス応答性の転写因子であるらしいことが解った。この遺伝子のホモログはボルボックスにも存在し、進化的に機能が保存された重要な遺伝子である可能性が高い。 2)逆遺伝学的解析(配偶子/接合特異的遺伝子の機能解析) クラミドモナスで接合子特異的に発現し葉緑体核様体に局在するEZYI(Armbrustet al. Cell 1993)に着目し、そのRNAi解析を行った。RNAi株においては、雄の葉緑体核様体の消失率が50%程度にまで減少し、さらに雄の葉緑体DNAに導入したスペクチノマイシン耐性遺伝子の次世代への遺伝が促進されたことから、EZY1の母性遺伝への関与が少なくとも部分的に示された。現在、EZY1をHis-Tag融合蛋白質として大腸菌で発現させ、精製をおこない、その生化学的な活性(DNA結合能、結合選択性、ヌクレアーゼ活性など)について明らかにすることを目指している。
|