植物の液胞は、物質の貯蔵や分解、細胞の伸長など重要な働きをもつ。しかしながら、液胞が存在しない細胞において液胞がどのように作られるかは、1970年代の電子顕微鏡による微細構造解析からProvacuoleと呼ばれる構造体から液胞が形成されると推定されているのみである。 高圧凍結装置および凍結置換装置を用いてシロイヌナズナおよびタバコ根端を固定・置換する条件を検討し、良好な条件を決定した。さらに、根端組織において、液胞が存在しない細胞から存在する細胞へ分化している細胞の位置を微細構造学的に解析し、把握した。これらの結果を踏まえて、抗Vacuolar H^+-PPase(以下、PPase)ウサギ抗体による免疫電顕により、PPaseは分化している細胞内で、ゴルジ体由来の小胞、その小胞のクラスター、リング状の構造体、そして、液胞膜に局在することが明らかとなり、分化の終わった細胞ではゴルジ体と液胞膜のみに存在することがわかった。また、PPaseラット抗体を用いて、他の液胞膜タンパク質と免疫2重染色を行なった結果、それぞれ異なる小さな液胞に局在する場合があることがわかった。さらに、PPase変異体の電顕観察を行い、リング構造がないことを確認し、オートファジー機能欠損株を用いた免疫電顕解析により、PPaseが存在するリング構造はオートファジー機構とは独立した分解機構であることを明らかにした。以上、PPaseの細胞内局在を明らかにし、PPaseが存在するリング構造が液胞形成に重要な働きを担っていることを明らかにした。
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