研究概要 |
環形動物類のケヤリの生体内には高濃度で遊離D-アルギニンと,そのリン酸化合物である遊離D-アルギニンリン酸が存在し,また,D-及びL-アルギニンを共に基質として利用することのできる特異なアルギニンキナーゼが存在している。今までの研究によりこのケヤリ・アルギニンキナーゼの立体構造とその基質結合部位の予測から,64,89,320位のアミノ酸残基の基質認識と酵素触媒反応への関与が示唆された。そこで,これらのアミノ酸残基におけるアミノ酸置換変異体を作成し,その酵素活性の比較を行ってみることにした。アミノ酸置換変異体は大腸菌を用いたリコンビナント酵素として発現され,精製され,その酵素活性が測定された。その結果,L64,Y89,N320へのアミノ酸置換変異体は酵素活性を大きく増減させ,これらのアミノ酸が酵素触媒反応に関与することが明らかとなった。特に,320位のアミノ酸残基は,L及びDアルギニンの認識に関与することも予想された。これにより,鏡像異性体であるD-およびL-アルギニンのアルギニンキナーゼによる光学認識の解明への足かがりが得られた。 今後はこれらのアミノ酸残基の光学認識への関与についてをさらに探ると共に,他の基質認識に関与するアミノ酸残基の特定を進める予定である。
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