研究概要 |
本年度は,カサゴ目魚類のうち,フサカサゴ科のメバル属魚類,カジカ科のキンカジカ属,クサウオ科のコンニャクウオ属について研究を進めた.胎生という特殊な繁殖様式を持つメバル属に関しては,メバル3色彩型に対して形態学的・遺伝学的分析から3種が含まれることを明らかにし,それぞれ分類学的にも整理した.また,生態学的研究から3種には成長やマイクロバビタット,食性などの違いが存在すること明らかにした.これで,メバル3種がどのように生殖的隔離を保っているのかを考察するための基礎データが揃ったと言える.キンカジカ属魚類においても,従来「キンカジカ」と同定されてきたものに関し,2色彩型が含まれており,これらに対して形態学的・遺伝学分析を行った.その結果,これらは形態学的・遺伝学にも明瞭に異なっているだけでなく,分布域も異なることが明らかとなった.クサウオ科のコンニャクウオ属に関しては,主にサケビクニンについて形態学的・遺伝学分析を行った.その結果,サケビクニンとは主に色彩が異なるとされていたザラビクニンとは,形態学的・遺伝学的差異がないことが明らかとなり,コンニャクウオ属に関しては色彩は種を認識するためのツールとはならない可能性が示唆された.一方で,幅広い分布域をもつサケビクニンは,それぞれ海域ごとにやや異なった形態的・遺伝的特徴を持つことが明らかとなり,複数種を含んでいる可能性が考えられた.キンカジカ属やコンニャクウオ属は大きい沈性卵を産出することが知られており,地理的分散能力が低いと考えられる.海域ごとに異なる特徴を持つキンカジカやサケビクニンはこのような繁殖様式に起因していることが考えられる.来年度は,本年度得た結果をふまえ,いくつかの色彩多型が知られているメバル属のキツネメバル類,コンニャクウオ属では特徴的な色彩を持つヒレグロコンニャクウオ類について分析し,繁殖様式と色彩のもつ進化的意味について考察していく予定である.
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