研究概要 |
1,ヤシ類の訪花性甲虫について検討した結果,ゾウムシ科,ケシキスイ科など特定の分類群が多数群がる実態が明らかとなってきた.また,各種ヤシと訪花性甲虫の関係は,1対1の場合から,1対複数の場合まで認められ,後者のパターンは熱帯域に多い. 2,ヤシ類の訪花性ゾウムシについて検討した結果,他の地域とは異なる,複雑で入り組んだ分類群構成が熱帯アジア地域で認められることが明らかになってきた. 3,マレーシアボルネオの低地熱帯林でヤシ類およびモクレン目双子葉の訪花性甲虫相の調査を行った.ウチワヤシ類(Licuala spp.)から初の訪花性ゾウムシを発見するとともに,誘因トラップによる調査で多量の訪花性甲虫の採集に成功した.ゾウムシ類が優先し,次いでハムシ類が多く,温帯域で同様なトラップを設置した場合と異なる分類群構成が認められる実態が明らかとなってきた.また,得られたゾウムシ類の多くは,バンレイシ科,ニクズク科の訪花性種と考えられている仲間であった. 4,熱帯では1種の植物に対し,多様で複雑な送粉系が存在する可能性があり,その実態解明は生物資源保全や系統保存の観点からも重要である.また,ブナ科など風媒花が主体の温帯林と虫媒花が多い熱帯林での訪花性甲虫の分類群構成の違いなど,熱帯林の多様性維持機構に関わる基礎的データが得られつつある.
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