研究概要 |
+型,-型の接合型(性)を持つヘテロタリックなヒメミカヅキモには,生殖的に隔離された複数の交配群が存在する。交配群IEは,他の交配群(IIA,IIB)と生殖的に隔離されており,その性フェロモン(PR-IPおよびPR-IP Inducer)も交叉活性を示さない。また、交配群IIAの+型細胞と交配群IIBの-型細胞の掛合わせでは接合が見られるものの,逆の掛合わせでは接合が見られない。このように非対称な生殖隔離関係にある交配群から有性分裂誘導活性を示す培地を調製し,もう一方の交配群に対する交叉活性を試験したところ,交配群IIAの-型細胞が放出する性フェロモン(交配群IEのPR-IPに相当)のみが,交配群IIBの+型細胞にほとんど作用出来ないことが判明した。 更に、交配群IIA,IIBより,2種の性フェロモン相同遺伝子を単離し,発現解析を行なったところ,性特異的な発現パターンは交配群間で共通してみられた。また,両者の配列を比較したところ,PR-IP Inducer遺伝子については高い相同性が示された(95.1%)が,PR-IP遺伝子の19kDaサブユニット遺伝子ではコードする129個のアミノ酸残基のうち,22個が異なっていた(82.9%)。これらの結果より,交配群IIAのPR-IPを交配群IIBの+型細胞が,認識できなくなることで,非対称な生殖隔離が起こったことが示唆された。 また、現在系統保存されている株は、30年以上前に単離されたものである。そのため、現時点で交配能をもたないものもあり、生理学的な実験を行なえない交配群も存在する。本研究ではこれまでに、埼玉、長野、茨城、沖縄、台湾、バリ(インドネシア)から、ヒメミカヅキモの単離培養に成功している。
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