研究概要 |
本研究の目的は,脊椎動物における近縁種問の生殖的隔離機構の遺伝的基盤を,モデル脊椎動物であるトゲウオ科魚類(Gasterosteidae)を用いて解明することである。研究代表者がこれまで,トゲウオ科魚類の分子系統解析,集団遺伝解析,そして行動解析から見出した,トミヨ属魚類の近縁2種間の生殖的隔離機構,すなわち,交配後隔離機構である雑種オス不稔と,交配前隔離機構であるオスの営巣行動の違いという,2つの形質に関して,量的形質遺伝子座(QTL)解析を行い,主要なQTLの染色体上の位置を特定すると共に,近縁属であるイトヨの全ゲノム塩基配列データベースを用いた候補遺伝子の探索および多型解析を通じて原因遺伝子を特定することを目的とする。平成19年は,このうちトミヨとイバラトミヨの戻し交配家系の作成とQTL解析の基礎となるAFLP法による高密度マッピングを行った。平成19年春期に成熟したトミヨとイバラトミヨの戻し交配家系の87個体からゲノムDNAを抽出し,AFLP法によりマッピングに必要な分離マーカーを探索した。現在までに,200座以上の分離マーカーを得ており,平成20年度には数百座までマーカーを増やす予定である。また,トミヨのゲノムDNAから濃縮法によってマイクロサテライトマーカーを開発し,周辺の塩基配列をイトヨゲノムデータベースに対してBLAST検索することにより,イトヨの各染色体あたり複数のマーカーを得た。平成20年度は,これらのマーカーを足がかりに,AFLP法によって得られた多数のマーカーを追加していくことにより,効率良く高密度連鎖地図を作成していく予定である。
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