平成19・20年度に実施した研究内容は、1)ナミアゲハ(以下ナミ)の近縁種から、ナミから発見された産卵刺激物質受容体(尾崎私信、以下ナミ受容体)と相同な遺伝子を同定し、そのリガンドを特定する、2)ナミ受容体の種内変異について調べ、変異が存在する場合はナミ受容体のリガンド受容能に変化をもたらす部位を特定する、の2つである。 1)について、ナミ受容体の配列(尾崎私信)をプローブとして、同属のキアゲハ・クロアゲハ・モンキアゲハの3種から類似の遺伝子の一部を同定する事ができた。3種のうちキアゲハはナミと近縁であるが、セリ科植物を食草としており、産卵刺激物質は大きく異なる事が予想される一方、ナミと近縁でないクロ・モンキの2種はナミと同じ食草を利用しており、クロについては産卵刺激物質が一部重複する事が分かっている。これら遺伝子間の相同性は、食草を異にするキアゲハのみで低い事が予想されるため、全長配列の決定によりキアゲハを含む近縁種間で相同性を比較することが望まれる。 一方、2)ナミ受容体の種内変異に関しては、種内変異の存在は認められたが、機能の変異を発見するには至っていない。
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