研究概要 |
本研究は、結核治療のための重要な標的となり得る銅イオンポンプの立体構造を解き明かすために、結核菌由来の銅イオンポンプ(CtpA,CtpBの結晶化を目指している。初年度は、結晶化に適した蛋白質試料を大量に調製する系の構築を目指し研究に取り組んだ。 当研究室で細菌や高度好熱菌由来の重金属イオンポンプの発現に成功した大腸菌発現系でまずは試してみた。発現は数種のHisタグを含んだベクターを用いて、一般的の大腸菌ホストから稀コドンに対応したものや膜蛋白質の発現に適したものまで使用したが、本来のターゲットであるCtpAの発現は認められなかった。一方、その他のイオン輸送体の中でMnやFeを輸送すると考えられている大腸菌由来のMntHは、結晶化に使用可能だと期待される量が膜画分へ発現した。この蛋白質は細菌に感染した際の抵抗性遺伝子として同定されたNrampファミリーに属し、細菌から哺乳類まで広く保存されている。Nrampファミリーは宿主がパラサイトを排除するためだけではなく、感染した結核菌自身そのものの生存にも大切な役割を果たしているらしい。これも研究の目的に応じたターゲットとなる。 今後、結核菌と同じくグラム陽性菌であるコリネバクテリアや乳酸菌をホストとした発現系を用いて、CtpAを初め結核菌の膜輸送体の発現スクリーニングを行う。それと同時に結晶化に適したMntH標品の大量調製を行い、結晶化ロボットなどを駆使して結晶化条件の検索を進めたい。
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