研究概要 |
本研究は、天然には微量にしか存在しない糖、「希少糖」の生産に関するこれまでの研究成果ならびにPseudomonas stutzeri由来L-ラムノースイソメラーゼ(L-rhamnose isomerase:L-RhI)のX線結晶解析の結果をもとに、より効率的な希少糖の生産を目指したP. stutzeri L-RhI変異酵素の分子設計、蛋白質工学的アプローチによる改変を行うことを目的とした。構造解析結果をもとに、基質認識へ影響を及ぼす残基としてSer329に着目し、Phe、Lys、Leuに置換した変異酵素を作製し、活性測定およびX線結晶解析を行った。Ser329は触媒反応機構に直接関与する残基ではなかったが、これらの置換残基はL-ラムノースに対する酵素活性を低下させた。しかし、Ser329LysではD-アロースに対する活性の低下は抑えられ、構造解析からはLys残基はD-アロースと新たな相互作用を形成し、基質を安定に保持していることが示された。Ser329は側鎖の種類によって基質特異性に影響を与える重要な位置にある残基であると考えられた。また、他の希少糖生産の主要な酵素であるPseudomonas d chori i由来D-タガトース3-エピメラーゼ(D-Tagatose 3-epimerase: D-TE)についてもX線結晶解析を進め、P.stutzeriL-RhIと同様に、他の多くの希少糖生産に有用な構造情報を得ることを目指した。P.cichorii D-TEについても、希少糖が結合した複合体の3次元構造をX線結晶解析により決定した。得られた3次元構造情報に基づき、基質のエピマー化を行う触媒反応機構「C3-03プロトン交換反応機構」を提唱し報告した(Yoshida, et. al.(2007)J.Mol.,ol. Biol.,374,443-453)。
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