本年度は研究計画1)緑膿菌セラミダーゼのプロモーター部位の同定と発現解析及び、研究計画2)構造生物学に基づいた中性セラミダーゼの反応機構の解析を計画していた。 研究計画1)に関しては、緑膿菌セラミダーゼの発現誘導に関わると推定される遺伝子を緑膿菌ゲノムの中から探索し、クローン化した。現在はこの遺伝子のノックアウト株を作成するためのノックアウトベクターを作成しており、まもなく本遺伝子と緑膿菌セラミダーゼの発現の関係を明らかにすることが出来ると考えている。また、緑膿菌におけるノックアウトベクターの作成を簡略化させるためのシステム作りも進めており、本システムを使用することによりノックアウトベクターの作成が非常に簡単になることが予想される。 研究計画2)に関しては、最近我々が明らかにした緑膿菌セラミダーゼの結晶構造から推定した反応機構を証明するために、反応に直接関わると推定されるアミノ酸の変異体を作成し、大腸菌で発現させて活性を測定した。その結果、予想したアミノ酸の変異により活性が大きく低下し、推定反応機構が正しいことが証明された。一方、ラットの中性セラミダーゼに関しても該当するアミノ酸が保存されていたことから、それらの変異体を作成し、動物細胞に導入して活性を測定したところ、タンパク質の発現量に変化はなかったが、活性が同様に大きく低下していた。これまでに我々は、中性セラミダーゼが様々な生物に存在することを見いだし、その遺伝情報が細菌から哺乳動物まで保存されていることを明らかにしたが、本研究によりこの保存性がアミノ酸レベルだけでなく高次構造レベルでも証明された意義は大きい。
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