研究概要 |
転写制御因子による転写活性化にはクロマチンの構造変換が必須である。その過程にはクロマチンリモデリング因子,ピストン修飾酵素およびヒストンシャペロンなどの蛋白質が関与している。クロマチン構造変換に関わる因子の分子作用機構を解明することは遺伝子発現制御の分子機構の理解に非常に重要である。本研究では,クロマチンリモデリング因子ACF,ヌクレオソーム会合因子,およびヒストンアセチル化酵素に注目して,それらの分子作用機構を分子構造の観点から明らかにすることを目的とする。 これまでに,クロマチンリモデリング因子ACF(ISWI-Acf-1複合体)を昆虫細胞により大量発現させ,蛋白質精製を行った。ヌクレオソームの調製を行った。ISWIのDNA認識機構を明らかにするため,ATPaseドメインの調製を行った。 ヌクレオソーム会合因子によるヒストンの認識機構を明らかにするため,まず,ヌクレオソーム会合因子とヒストンH2A-H2Bの間の親和性を表面プラズモン共鳴法により解析した。その結果,ヌクレオソーム会合因子とH2A-H2Bの解離定数(K_D)は14nMであった。ヌクレオソーム会合因子のC末端酸性領域を欠損させた変異体では,H2A-H2Bとの親和性は1/3に低下した。この結果からヌクレオソーム会合因子の酸性領域はヒストンとの結合に関わることが示唆された。また,ヌクレオソーム会合因子は分子内に存在する長いループ領域により多量体を形成するが,そのループ領域はヒストンとの結合に関与しないことが変異体を用いた測定から示唆された。現在,他の解析データも含めた測定結果に基づいて安定性のより高い複合体を調製して,結晶化条件の検索も行っている。 p300の活性制御機構を調べるため,酵素活性を有するp300変異体を昆虫細胞により発現させ,精製を行い,結晶化条件の検索を行っている。
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