研究課題
真核生物では、タンパク質をコードする遺伝子の転写はRNAポリメラーゼIIが行うが、正常な開始には少なくとも5種類の基本転写因子(TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIF、TFIIH)と呼ばれるタンパク質の助けを必要とする。TFIIEはTFIIHと協調しながら働くが、両者の相互作用の詳細は不明であった。本研究では、ヒトTFIIEのαサブユニットのC末の酸性(Acidic : AC)ドメインとヒトTFIIHのp62サブユニットのN末のプレクストリン相同(Pleckstrin homology : PH)ドメインが特異的に強く結合することを見出した。TFIIEαACドメインの単独構造、及びp62PHドメインとの複合体構造を核磁気共鳴(NMR)装置により決定したところ、ACドメインの酸性アミノ酸が連続したN末テールは、未結合時には全く構造をとらない天然変性状態であったが、結合時にはβストランドを含む構造が誘起され、PHドメインの塩基性表面に広く巻き付いていた。そこでは数多くの静電気的相互作用が見られた。N末テールの酸性残基に挟まれたフェニルアラニン、及びバリン残基は、PHドメインの分子表面の2カ所の窪みにそれぞれ入り込んでいた。また、N末テールに加えて、コア構造も結合に寄与していた。がん抑制因子p53や単純ヘルペスウィルスVP16の酸性転写活性化ドメインもp62PHドメインと結合するが、TFIIEαのACドメインは新規の様式で結合していた。興味深いことに、p62PHドメイン上の結合部位の一部が重なり合うことが明らかになったことから、転写活性化時でのp62PHドメインの受け渡し機構を提案した。本研究の成果は、TFIIE-TFIIH相互作用構造として世界初であり、ヒトTFIIEの全体構造解明のみならず、現在世界中で推し進められている転写開始複合体構造決定への有益な情報を提供する。
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http://www.yokohama-cu.acjp/res/researcher/info/0804150kuda-ookuma.html