研究概要 |
納豆菌が生産するポリ-γ-グルタミン酸(poly-g-glutamate;PGA)を加水分解する3つの酵素のうち、納豆菌を宿主とするバクテリオファージ(ΦNITl)由来の新規のPGA分解酵素(PghP;25kDa)について、酵素反応機構の解明を目的とし、X線結晶構造解析に向けた結晶化を行った。PghPは、まず、PEG600を沈殿剤として用いた条件で結晶が得られ、X線による回折像の取得にも成功した。PghPが新規構造を持つタンパク質であると考えられたため、Se-誘導体の結晶を作り異常分散法での位相決定を行うために、Se-誘導体タンパク質の調製を行った。Se-誘導体タンパク質は常法でNativeタンパク質と同様、高収率で発現され、活性を有する状態で調製されたものの、先に得られていた結晶化条件では結晶が得られなかった。 そこで、Se-誘導体タンパク質で結晶化条件を再検討したところ、PEG300とPEG1000を沈殿化剤とする新たな結晶化条件を見いだすことに成功した。結晶はシッティングドロップ蒸気拡散法を用いて、沈殿剤溶液とタンパク質溶液を混合して沈殿剤に対して蒸気平衡状態にして約1週間で再現よく得ることができるようになった。Nativeのタンパク質を用いても同じ条件での結晶が得られている。X線回折像は実験室系のX線解析装置を用いて測定し、3Åに迫る分解能の反射を確認することができた。この結晶は空間群P3_121,あるいはP3_221に属し、a=b=85.8, c=86.6Åの格子定数をもつこと、また、単位結晶中に2分子のPghPが存在し、結晶の水分含量は38%程であることが明らかとなっている。放射光での異常分散データの取得によりPghPの結晶構造が決定される可能性が高まった。
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