納豆菌が生産するポリ-γ-グルタミン酸(poly-g-glutamate; PGA)を加水分解する3つの酵素のうち、納豆菌を宿主とするバクテリオファージ(ΦNIT1)由来の新規のPGA分解酵素(PghP; 25kDa)について、酵素反応機構の解明を目的としX線結晶構造解析を行った。構造解析は、Se-誘導体を利用した単波長異常分散法(SAD)により行った。まずSe-誘導体結晶を作製し、高エネルギー加速器研究機構放射光施設ビームラインNW12でSe吸収端での異常分散項を含む2.6Å分解能X線回折データの取得を行った。プログラムsolveでSAD法による位相計算を行った後、初期位相から、構造モデルのトレースを行った。非対称単位結晶中の2分子の全体構造のトレースを行った後、1.8Å分解能nativeデータヘ構造の移設を行い、高分解能データを用いて、構造モデルの精密化を進めた。最終的に結晶学的R因子21.1%の構造モデルを取得することに成功した。PghPは逆平行βシートを主体とする構造を有し、非対称単位中の2分子が、それぞれのβシートをつなげるように二量体を形成していた。その両端の位置にそれぞれの分子が一つずつ亜鉛イオンを配役しており、そこが触媒部位であると推定できた。亜鉛イオンの結合部位は分子を2分する溝の中心にあり、溝の中にはグルタミン酸やアルギニンなど、触媒基や基質認識にかかわると考えられるアミノ酵が存在していた。本酵素はメタロプロテアーゼ様触媒機構を持つのではないかと考えられた。今後触媒反応機構を解明する上で基質複合体構造が必要になるが、数種類のDL-オリゴγ-グルタミン酸ペプチドを結晶にソーキングしてデータを取得したものの、ペプチドとの複合体との構造を得ることができなかった、引き続き共結晶化を利用した複合体の作製・解析を進めることが必要である。
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