納豆菌が生産するポリーγーグルタミン酸(poly-g-glutamate ; PGA)を加水分解する3つの酵素のうち、納豆菌を宿主とするバクテリオファージ(ΦNITI)由来の新規のPGA分解酵素(PghP ; 25kDa)について、X線結晶構造解析を行い、単波長異常分散法(SAD)により構造決定を行った。構造解析では、構造構築後に、電子密度の重なった部分が存在したためデータの双晶が疑われ、各種プログラムで検証した結果、本結晶は空間群P3_2であり、merohedral twinで、twin fractionが0.47であり、空間群P3_221は双晶化による見かけの空間群であることが示唆された。そこで空間群P3_221で処理したデータを使用し、非結晶学的対称の拘束を利用し、結晶学的R因子19.7%のモデルを得た後、データを空間群P3_2で再処理し、反射の分離を行い、結晶学的R因子が約28%のモデルを最終構造モデルとした。 PghPは逆平行βシートを主体とする構造を有し、非対称単位中の2分子がそれぞれのβシートをつなげるように二量体を形成していた。その両端の位置にそれぞれの分子が一つずつ亜鉛イオンを配位しており、そこが触媒部位であると推定できた。本酵素は亜鉛ペプチダーゼであるcarboxypeptidase Aと類似した構造をもつことが判明した。 数種類のDL-オリゴγ-グルタミン酸ペプチドとの複合体解析を試みたものの、複合体構造を得ることができなかったが、carboxypeptidase Aとの比較により本酵素の触媒反応機構を明らかにした。また、亜鉛イオン結合部位のある溝の中にはグルタミン酸やアルギニンなどがあり、これらが触媒基や基質認識にかかわるアミノ酸であると推定された。
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