研究概要 |
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)変異体(合計22種類)の酵素学的パラメータ・基質(トリプトファン)解離定数の測定を行い、野生型のものと比較した。これにより基質:タンパク質の間の特異性を発揮するのに必要な活性部位残基の構造的条件を明らかにした。基質との親和性が上昇した変異体を用いて基質あるいは阻害剤との複合体の結晶化を試みたが現段階で結晶は得られていない。共鳴ラマン分光法によりIDOのヘム鉄に結合した酸素分子の性質を調べた。IDOの酸素結合型は基質の有無にかかわらず不安定で寿命が短いために共鳴ラマンスペクトルの検出を行うことが困難であるため、回転式セルを使用せずに、大量のタンパク質試料とフロー式試料セルを用いて測定を行った。基質存在下で得られた共鳴ラマンスペクトル中の酸化還元マーカーバンドからは酸化型、還元型、酸素化型の3つの混合状態であることが判明し、Fe-O結合の振動モードはノイズレベルが高く観測できなかった。しかし、基質が存在しない時のスペクトル中にはFe-O結合の振動モードの検出に成功した。その値はミオグロビンで報告されている値よりもかなり小さい値でであった。これは二原子酸素添加酵素であるIDOでは一原子酸素酵素と異なりO-O結合の解裂が起こる事なく基質に添加されるためにはFe-O結合は弱い結合であると考察できる。ヘム型ジオキシゲナーゼのFe-O結合の振動モードを観測したのは世界的にも初めての成果である。
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