研究課題
アルツハイマー病の原因となるアミロイド蛋白質(Aβ)は、γセクレターゼによる切断をうけて生成する。しかし、γセクレターゼは4つの蛋白質からなる膜蛋白質複合体であり、生化学的な解析が困難であることから、酵素学的性質は未知であった。私は、ヒトγセクレターゼの4成分であるプレセニリン、ニカストリン、Aph1、Pen2とアミロイド前駆体蛋白質(APP)を酵母細胞に導入し、ヒトγセクレターゼ活性を再構成することに成功した。これにより、酵母膜画分を用いて、試験管内でγセクレターゼ活性を測定することが世界で初めて可能になった。また、転写因子(Gal4)を融合した人工基質(APP-Gal4)を導入することにより、酵母の生育からAβ生成量を評価することが可能になった。この生育を指標にしたスクリーニング法から、活性化型γセクレターゼ変異体を探索し、活性に必須と考えられていたニカストリンがなくても独自にプロテアーゼ活性を持つプレセニリン(PS1)変異体を17個取得した。これらの変異体には、第9膜貫通領域にS438Pの変異が見られた。438番目のSer残基は、プロテアーゼ活性中心近傍に存在する。SerからProへの変異によって、基質の通り道が開いて恒常的活性化型となっていることが示唆された。さらに、マウス胚性繊維芽細胞(MEF、野生型およびニカストリン遺伝子破壊細胞)にPS1変異体を導入し、哺乳類細胞中でもAβ生成にニカストリンを必要としないことを明らかにした。以上の結果は、Journal of Biological Chemistryに発表している(Futai et al.,2009)。本研究で開発した"酵母γセクレターゼアッセイ法"は、γセクレターゼの活性を調節する新規遺伝子や阻害剤の探索に非常に有用であり、国内外で高く評価されている。
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