癌細胞は、腫瘍組織に形成される細胞外マトリックスと相互作用しながら運動性を充進し、浸潤・転移する。その制御機構には不明な点が多く残されており、癌の進展を防ぐ効果的な手段の開発が望まれている。これまでに、癌細胞の細胞膜近傍における細胞外マトリックスのリモデリングが、癌細胞の浸潤・転移能において重要な役割を担っていることを見出した。本研究は、これまでの独自の知見を基盤にして、癌細胞の細胞膜近傍におけるマトリックスリモデリング制御機構を明らかにすることを目的とする。特に、癌細胞表層の細胞外マトリックスのリモデリングが、どのようにして、いつどこで起こるのかを解明することを目指す。平成19年度では、独自に癌浸潤促進作用を有することを見出した低分子量ヒアルロン酸に焦点を絞って、次のことをおこなった。まず、癌組織において、どのようにして低分子量ヒアルロン酸が生じるのかを解明するため、その責任分子・ヒアルロン酸分解酵素を同定し、その触媒機構を解析するため、蛋白質の発現および精製をおこなった。また、癌細胞が浸潤する過程で、いつどこで低分子量ヒアルロン酸が生じるのかを明らかにするため、還元末端標識したヒアルロン酸を用いて、細胞外マトリックスリモデリングの可視化法の開発を試みた。電気泳動法によるヒアルロン酸分解の可視化法を確立し、この方法により、培養細胞に発現させたヒアルロン酸分解酵素の活性を検出することが出来た。
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