細胞外分泌蛋白質WntとWntによって活性化される細胞内シグナル伝達経路は種を越えて保存されており、細胞の増殖や分化等の種々の細胞機能を制御する。Wntはヒトやマウスでは19種類、7回細胞膜貫通型のWnt受容体Frizzledは10種類存在する。WntはFrizzledに結合してシグナルを細胞内に伝えるが、各WntとFrizzledの組み合わせ/特異性については不明な点が多い。これは、Wnt蛋白質の精製が困難であったため、リガンドとして細胞に作用させる際は未精製品(分泌されたWntを含む培養上清 : conditioned medium : CM)を使わざるを得ず、純粋なWntの作用を解析することが不可能であったためと考えられる。本年度の成果は以下の通りである。 (1) Wnt-11蛋白質の発現系の確立マウスL細胞においてWnt-11蛋白質を培養上清中に分泌する細胞株を樹立した。Wnt-11の活性を測定する適当なアッセイ系を確立する予定である。 (2) Wnt-11蛋白質の精製上記(1)で確立した細胞株での培養上清中からの精製の効率を上げるため、C末端側にヒスチジン6個(Wnt-11-His6)を付加した蛋白質が培養上清中に発現することを確認した。今後この培養上清を用いて、ニッケルセファロース等のカラムを用いて精製を試みる。 また、Wnt-4ノックアウトマウスでは腎臓形成が欠損することが知られていることよりWnt-4は腎臓形成に必須であると考えられる。そこで、Wnt-4の細胞内シグナルを解析するために、Wnt-4蛋白質を発現する細胞株を樹立した。このCMでNIH3T3細胞を処理するとDvlがリン酸化することを見いだした。これを指標に現在部分精製を行っている。
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