臓器移植では、拒絶反応の制御のために免疫抑制剤が用いられる。しかし長期に用いられる為、非特異的免疫抑制や、遅発性の移植臓器障害などの副作用が見られる。移植医療の向上のためには、移植臓器に対する拒絶反応を副作用なく特異的に制御する必要がある。我々は、アロ移植片拒絶に関わるマクロファージ上に、アロ抗原を識別する新規受容体Macrophage MHC receptor1(MMR1)とMMR2を同定した。本研究は、この新規分子の、アロ抗原識別の分子機構を明らかにすることを目的とし、以下のような研究を本年度実施した。 1.MMRの機能をin vivoで阻害した時に、アロ移植片の認識や拒絶への影響を調べるために、MMR2遺伝子破壊マウスの作成を試みた。スクリーニングにより遺伝子破壊されたES細胞を同定し、C57BL/6マウス由来の胚盤胞へ遺伝子破壊ES細胞を導入することにより、キメラマウスが得られた。 2.ヒトのMMRの分子機構を解明するために、ヒトのゲノムとcDNAに対するデータベース検索により、マウスのMMRと相同性の高いヒトホモログの同定と単離を試みた。 1)ヒトゲノムにおいて、MMR1・2ともに高い相同性を持つ遺伝子座が同定され、ヒトに保存された機序があることが示唆された。 2)ヒトのcDNAデータベース検索において、MMR2については相同性の高い全長cDNAが洞定された。MMR1については、部分的に相同性の高いcDNAは見い出されたので、これを元にPCR primerを作成しヒトMMR1cDNAの単離を試みた。ヒト末梢血由来の白血球を用いた白血球混合培養法により、ドナーに対し誘導されるレシピエントの白血球中のマクロファージを回収した。このアロ刺激より誘導されたヒトマクロファージよりtotal RNAを抽出しRT-PCR法により、ヒトMMR1を単離した。
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