本研究題目は、臓器移植時の拒絶反応をより特異的に制御するため、アロ抗原を識別する新規受容体Macrophage MHC receptor(MMR)1とMMR2のアロ抗原識別の分子機構を明らかにすることを目指しており、本年度において以下のような研究を実施し知見を得た。 1. in vivoでのMMRの生理作用や移植免疫への影響を調べることを目的とするため、遺伝的背景をC57BL/6近交系と同一にしたMMR2遺伝子破壊マウスの作成をしている。遺伝子破壊キメラマウス(C57BL/6×129sv)をもとに、C57BL/6マウスとの戻し交配を進め、現在、7世代の掛け合わせまでが進行し、純系化を図っている。 2. マウスMMR2のヒトホモログとして単離されたヒトMMR2 cDNAをタンパクとして強制発現させ、HLAとの結合試験を行った。結果、この受容体分子のリガンドHLAの1つがHLA-B62(HLA-B15クループ)である可能性が示唆され、ヒトMMR2はマウスと同様にMHCに対する結合能が示された。これらの成果は、英論文として専門誌に公表した。 3. マウスMMR1・2は、非自己MHCのH-2D^d・H-2K^dと結合することから、各系統マウスの末梢血PBMC_sでのMMR1・2の発現を、RT-PCR法により調べた。結果、マウスMMR1は、H-2D^bK^bやH-2^k等のH-2D^dを持たないマウスのPBMC_sで認められ、H-2D^dを持つマウスでは発現が認められなかった。マウスMMR2は、H-2K^dを持つマウスでは発現が見られず、同様にH-2K^dを持たないマウスで発現が検出されなかった。これらより、リガンドMHCを持つ個体ではMMRの発現が抑制され、自己免疫を生じさせない発現調節を受けていることが示唆された。現在、ヒトMMRについても、同様の機序についても調べている。
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