アワヨトウから発見された多機能サイトカインであるGBPは、現在までにそのファミリーが鱗翅目昆虫から多数発見されており、生体防御や成長に関連して重要な様々な役割を担っていると推定されるが、その受容体活性化機構については未知の点が多く残されている。無脊椎動物のサイトカインの分子レベルでの研究例は少ないため、GBPの活性化機構に関する研究は、学術的に興味深いのみでなく、農林水産業等に応用可能な知見を得ることも期待出来る。そこで、このサイトカインの受容体活性化機構について、分子レベルで解明するため、大腸菌を用いた大量発現系を利用し種々のGBP変異体を調整し、その立体構造と受容体刺激能の関係について詳細に検討を行った。この結果、寄生蜂による寄生に伴ってアワヨトウ幼虫内で発現誘導されるGBPのC末端の伸長領域は、膜環境下で大きく立体構造変化を起こしGBPの生体膜等への親和性を高めることを明らかにした。この親和性の変化により、GBPのクリアランスにかかわるスカベンジャーからの回避等が起こることで、GBPの成長抑制活性が強く発現されると推定される。また、種々の無脊椎動物由来の生体防御関連の因子の解析を進め、アワヨトウ表皮から新規に同定した血球の遊走に関連するサイトカインHCPの立体構造等を明らかにすることに成功した。HCPとGBPは一次配列上の相同性は極めて低く、前駆体等の構造や組織での分布等には大きな違いがあるにもかかわらず、立体構造上は興味深い類似点を有することが明らかになった。
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