本研究の目的は微細な凹凸構造をもつ基板上にDNAを伸長固定化することでDNA結合タンパク質が自由な環境下でDNAと相互作用が可能となるDNAチップの作製を行うことにより、DNA結合タンパク質の結合ダイナミクスを一分子レベルで簡易に分析可能にすることである。本年度の研究成果としては光リソグラフィー技術を用いることにより、シリコン基板上に数ミクロン程度の微小な凹凸構造の作製を行った。次に、Langmuir-Blodgett(LB)法を用いることでこの基板上にDNAの伸長固定化を試みた。その結果、平坦なシリコン基板にくらべてDNAの伸長固定化が抑制されることがわかった。これは凹凸構造によりシリコン基板がより親水性となることで接触角が小さくなり、DNAが伸長固定化されるメニスカスの構造が大きく変化したためだと考えられる。そこでシリコン基板の凹凸構造のサイズ・周期・深さの制御や表面をシランカップリング剤で処理することにより、凹凸構造による親水性の変化が少なくなるよう調整した。また、シリコン基板上の凹凸構造を疎水的である高分子フィルムに転写することで高分子フィルム上に凹凸構造を作製した。これらの基板を用いてLB法によるDNAの伸長固定化を行ったところ、凹凸構造上に伸長固定化したDNAが観察された。このDNA伸長固定化基板を用いることにより制限酵素との相互作用を蛍光顕微鏡でリアルタイムに観察可能とし、容易で多数のDNA-制限酵素結合ダイナミクスの解析を可能とした。
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