シャペロニンがフォールディングを促進するメカニズムとして注目されている閉じこめによる空間制限の影響を調べることを目的として研究を行ってきた。変性蛋白質のシステインを光分解性クロスリンガーで架橋することで変性状態を維持し、シャペロニン空洞内に閉じ込めた後にUV照射によってフォールディングをスタートさせることで、GroELによる変性作用を排除し、空洞の影響だけを反映したフォールディングを観察できると考えた。実際にChristopherA.Hunter博士から提供してもらった光分解性クロスリンガーによって変性タンパク質をクロスリンクさせ、UV照射によって分解させることを試みたが、タンパク質との標識によってクロスリンカーの性質が変化するため分解できなくなることがわかった。 代わりにタンパク質内でジスルフィド結合を形成させ、高濃度の還元剤によって結合を解離させてフォールディングを開始させることに成功した。自発的なフォールディングとシャペロニンによるフォールディングを還元剤によって開始したところ、やはりシャペロニンによってフォールディングが速くなることがわかった。しかし、このジスルフィドを形成した変性タンパク質は空洞内に閉じ込めた後もGroELに結合していたことから、変性タンパク質はフォールド直前までGroELに結合してアンプオールドされていることが示された。これはシャペロニンによるフォールディングメカニズムを知る上で重要な発見である。
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