G蛋白質共役型受容体(GPCR)は、そのアミノ酸配列からいくつかのグループに分類できる。そこで本研究では、GPCRファミリー1のロドプシンとファミリー3の代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)を用いて、その構造変化を二量体化との関連について解析を行うことを目的とし、両受容体の種々の変異体を作製し解析した。 1.ロドプシン二量体において、一方の分子を光刺激し構造変化させ、それが残りの分子へと伝搬されG蛋白質を活性化するか検討した。ロドプシン(500nmに吸収極大)に少数の変異を施し吸収極大を約440nmに短波長シフトさせた変異体を作製し、野生型と共発現・精製した。そして、長波長側の光を照射することにより、野生型のみを選択的に光刺激した。その結果、変異体に由来するG蛋白質の活性化はほとんど認められず、構造変化の伝搬を観測することはできなかった。今回の試料は界面活性剤を用いて精製した試料であり、次年度は、共発現させた膜試料を用いてさらに検討を行う。 2.これまでにmGluRにおいて、変異を施すことにより刺激非依存的にG蛋白質を活性化する構成的活性化変異(CAM)部位をいくつか見いだしている。これらCAM部位は活性化に伴う構造変化にとってキーになる領域である可能性が高い。そこで、このうち、ヘリックスVに見いだしたCAM部位の構造変化について、他のヘリックスとの相互作用変化を中心に解析を行った。その結果、このCAMに対して他のヘリックスのCAMとを組み合わせることにより、刺激非依存的な活性化能が低下し、野生型の活性化能に近づくことが解った。これは、両残基の相互作用が活性状態形成にとって重要な役割を果たすと考えられた。次年度は、この残基間相互作用が二量体の1分子内で形成されているのか2分子間で形成されているのかを検討する。
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