シャペロニンはATP依存的に基質である変性タンパク質をリフォールディングする代表的なシャペロンである。一方プレフォルディンは変性タンパク質を補足し、シャペロニンへ受け渡すと考えられているが、詳細な機構は未解明である.本研究では、プレフォルディンがどのように変性タンパク質を補足し、シャペロニンと協調的に働いているかどうかを明らかにすることを目標としている. NMRにより、プレフォルディンの末端がシャペロニンと相左作用していることを明らかにした.また、シャペロニンのC末端部位が変性タンパク質の巻き戻しに重要なATP加水分解サイクルを制御していることを見出した.一方、変性タンパク質は凝集し、アミロイドとよぱれる繊維状構造をつくる場合がある.プレフォルディンがこのようなアミロイド凝集形成にどのような影響があるめかどうか調べたところ、アミロイドβペプチドのオリゴマー形成を誘発することを新しく見出した.近年アミロイドβオリゴマーはアルツハイマー病の原因物質と言われているが、その形成機構は不明であった.今回プレフォルディン存在下で形成したアミロイドβオリゴマーの毒性が高かづたことから、プレフォルディンが発症メカニズムに関わっている可能性が初めて示唆された.また、生体内での分子シャペロン相互作用を観察するために、赤外光励起により可視光蛍光を示すアップコンバージョンナノ粒子の開発を行った.これにより細胞内での相互作用の長時間観察が可能になると期待できる.
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