研究概要 |
申請した研究計画に従い,モータータンパク質との相互作用に寄与すると考えられる微小管上の静電ポテンシャルを理解するため,まずポリアクリルアミドの荷電粒子を合成し,その形状と性質を計測した。その結果,直径約40nmの粒子に10^4個程度のアミノ基が付加された粒子が合成できたことを確認した。次に,この粒子が微小管と相互作用することを顕微鏡下で確認し,微小管に沿って1次元ブラウン運動を行なう様子を定量的に解析した。 粒子の運動は,粒子の電荷密度に強く依存した。電荷密度が低いときは拡散係数は0.9μm^2/s程度と非常に大きく,一方滞在時間が平均0.1秒未満と短かったが,電荷密度が高くなるにつれ拡散計数は小さく,滞在時間は長くなるのが観察された。この変化を定量的に解析したところ,粒子は,微小管と結合している状態と微小管上を自由運動している状態の2つの状態を短い時間の間に繰り返しながら1次元ブラウン運動を行なっている,というモデルで最もよく説明できることが明らかとなった。このモデルを用い,微小管上のポテンシャルの形状と深さを求めることができた。 これまでチューブリンの結晶構造から得られた分子モデルを用いて,微小管表面の静電ポテンシャルを計算機で近似的に求めた例はあったが,微小管表面の静電ポテンシャルを実験的に求めたのはこれが初めての例である。この静電ポテンシャルはキネシンやダイニンなどのモータータンパク質が微小管から解離しにくいように,表面につなぎ止めておく機構として機能していると考えられる。 この成果は平成20年度に学会で,また論文として発表する事を予定している。
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