昨年度より、研究実施計画書に記された標準試料を用い、鉄原子の吸収端近傍(7.11 keV)で異常分散小角散乱の計測実験を行ってきた。観測セルの光路長等について最適化に努めてきたが、未だ異常分散信号の定量的な記録には成功していない。次年度も引き続き、試料調製、観測セル、検出器、測定吸収端などについて検討・調整を進め、異常分散信号が補足できるよう研究を継続する。 計測実験と並行して、異常分散を含めた小角散乱測定をより簡便に行うため、「多連セル」と「散乱計測用マイクロセルの自動洗浄装置」の開発を進めている。多連セルを作成する上で問題となる点は、異なる観測ポートで光路長、窓材の歪、窓材の平行性などを厳密に同一にせねばならない点である。各観測ポートを独立に設計して窓材を個別に調整するのが最もシンプルな方法であるが、どうしても観測ポートごとに微妙な差が生じてしまう。その解決策として、全観測ポートを窓材で一様にシールする方法を考案し、その試作機を作成した。次年度は開発したセルをビームラインに持ち込み、実際に標準試料を用いて計測試験を行い性能評価する予定である。 洗浄装置については全体デザインを決定し、現在、試作機を作成して動作確認を進めている。洗浄液や乾燥空気を吹き付けるためのマニフォールドを設計し、そこに複数の制御機器を接続して使用する。また、システム全体を制御するための回路設計、マイコンへのプログラムの書き込みを行った。試作機の作成・調整から得られた知見をもとに、今後、多連セルに対応した洗浄装置の実機デザインを行う。
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