本年度では、前年度に引き続き、tmRNA/SmpB複合体とリボソームの相互作用解析を行うための基盤構築を行った。まず、リボソーム固定化について、リボソームRNAに変異を持つリボソーム及びそれに相補する配列を持つオリゴDNAを用いた固定化方法と、リボソームタンパク質S2にアビジンタグが付加された変異リボソームを用いた固定化方法の2種類を試みた。その結果、オリゴDNAを用いた方法ではリボソームの基盤への非特異的吸着が多かったのに対し、アビジンタグを用いた方法ではリボソームの非特異的吸着は1%以下に抑えられることが分かった。また、溶液中に基盤をPMB80ポリマーでコーティングすることにより、非特異吸着を改善することに成功した。一方、N末のシステインを介して蛍光標識を導入したSmpBを用いて一分子観察を試みたところ、SmpBの基盤への非特異吸着が観察されたため、tmRNA上のグアニン残基にランダムラベルすることによる蛍光標識法を試みた。その結果、蛍光標識を導入したtmRNA及びリボソームの特異的な相互作用が観察され、tmRNA/SmpB複合体とリボソームの相互作用解析を行う環境が整ったことから、野生型SmpBと変異型SmpBを用いた場合の相互作用の比較、抗生物質の効果などを測定することにより、トランストランスレーションにおけるリボソームのダイナミクスについての知見が得られると期待される。
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