本研究では、減数分裂と体細胞分裂の両方の分裂様式を比較して「減数分裂」にのみ見られる現象に注目して、その分子機構を研究する。平成19年度には、(1)減数分裂第一・第二間においてDNAがスキップされる分子機構に関して、まず個々の細胞内におけるDNAの過剰複製の有無を、GFPを用いて顕微鏡下でモニターする系を構築した。また、(2)減数分裂第一・第二間において染色体分配装置が2連続で形成される機構について、リアルタイム顕微鏡による経時観察をおこなった。この目的を遂行するために、微小管、スピンドル極体、染色体の動原体部位がGFP/RFP/CFPなど多色の蛍光タンパク質で標識された分裂酵母細胞を作製し、観察するシステムを構築することで、本研究の基盤を固めて独自性を高めた。観察の結果、スピンドル極体の複製が減数第一分裂の終期に起きること、さらにそれがサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性に依存することを明らかにした。さらに、複製されたスピンドル極体が第二分裂のスピンドル微小管を形成するためには核内に埋め込まれる必要があるが、これもCDK活性に依存した現象であることが明らかとなった。このように、減数分裂第一・第二間において維持されているCDK活性が減数分裂特異的な分裂装置形成のために重要な働きをもつことが明らかとなりつつある。これらの結果は、さらに研究を進めることによって、減数分裂の特異性のみならず、体細胞分裂における分裂装置形成の分子機構の解明にも大きく貢献するものと考えられる。
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