研究概要 |
本研究では、細菌染色体(核様体)の高次構造構築とその構造制御機構が転写と密接に関連しているとの申請者の発見にもとづき、その具体的な機構を分子レベルで解明することを目的とした。 平成19年度に引き続き、大腸菌核様体タンパク質欠損株(ΔbupA, DhupB, ΔhimA, ΔhimD, Δhns, Δhfq, Δfis, Δstapa)のAFM解析を行い、(1)30nm・50nmファイバーといった中間径のファイバー構造体が維持されるが、いずれの欠損株でも不安定になること、(2)10nmファイバーの構築にはこれら核様体も必須ではないことを明らかにした。これら結果は、核様体タンパク質が、直接特定の構造構築を担うのではなく、核様体全体の構造安定性に寄与していることを示唆している。 さらに、大腸菌・枯草菌の核様体構成・制御因子の同定・定量のため、核様体の精製・SDS-PAGEによる分離を行い、RNase処理・Rifampicin処理によって構成因子は変化しないことを明らかにした。この結果は、核様態構造の維持には、RNAと転写活性自身が決定的であることを示している。In vitro再構成系での検証を模索中である。 LC-MS/MS解析により、大腸菌で約500種類、枯草菌で約250種類の核様体結合タンパク質を同定した。うち、109種類が大腸菌・枯草菌で共通であったが、新規核様態構造タンパク質候補は見つからず、Huのみが細菌共通の該様体タンパク質であるとの結果になった。この結果は、Fis, HNSなど種(属・科)特異的に発達させた核様体タンパク質が各細菌の核様体構造構築・維持を担っていることを示唆する。枯草菌で、種(属・科)特異的な約20種類の新規核様体構造タンパク質候補を同定し、これらの機能解析を行っている。これらタンパク質中に、大腸菌のHu以外の核様体タンパク質(Fis, H.NSなど)の機能相同性を持つものがあるのではとの仮説を立て、検証中である。
|