研究概要 |
本研究では、発生過程のHSF群の転写制御機構、およびHSFが発生過程特異的にクロマチン構造に与える効果を明らかにするのを目的としている。生後2日目のレンズ上皮細胞株を作成してChIP解析を行い, 58箇所のHSF4結合領域を同定した。このHSF4のDNA結合配列のすべてに、既に知られているHSF1結合配列のnGAAnのG塩基は保存されていたが、A塩基はほとんど一致しなかった。HSF4は結合配列として同定したnGnnn配列のほとんどでHSF1やHSF2よりも強い結合を示した。このHSF4結合領域のほとんどは、イントロンあるいは近傍の遺伝子から10kb以上離れた領域に存在した。発生過程が進むにつれてHSF1とHSF2の結合が低下し、それに伴いHSF4により発現制御をうける近傍の遺伝子が幾つかあることを明らかとした。次に、HSF4の結合が周辺部のクロマチン修飾に影響を及ぼすか調べたところ、HSF4を欠損することでHSF4結合領域のヒストンH3K9メチル化が亢進することがわかった。さらに、多くの近傍遺伝子は熱ショックにより誘導され、驚いたことに一部の遺伝子はHSF4を欠損すると誘導を起こさなくなった。興味深いことに、HSF4を欠損することで結合領域へのHSF1の結合が低下していることがわかった。以上の結果から、HSF4はクロマチン制御を起こすことで、発生過程や熱ショック応答における遺伝子制御に関与していることが示唆された。
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