研究概要 |
本研究は、複製開始のタイミングを制御するメカニズムの解明を目指している。大腸菌の複製開始蛋白質DnaAの活性は、ヌクレオチド結合によって調節されており、ATP結合型が活性型で、ADP結合型は不活性型である。申請者は、特異的なDNA配列(DARS, DnaA-Reactivating Sequence)が、ADP結合型DnaAをATP結合型DnaAへ変換することを見出している。このDARS活性は、大腸菌の蛋白粗画分によって促進される。そのため、蛋白粗画分中に、DARS促進因子(DAF, DARS-Activating Factor)の存在が示唆される。そこで、本研究では、DAFの単離、同定及び機能解析を遂行中である。 平成20年度の研究では、ある遺伝子破壊株から調製した蛋白粗画分は、DARS促進活性を失っている事が分かった。さらに、遺伝子にコードされている蛋白質を精製し、破壊株の蛋白粗画分に加えると、DARS促進活性が回復した。これら結果から、この蛋白質がDARS促進に必須であると示唆される(DAF1, DARS-activating factor 1と命名)。興味深い事に、精製DAF1のみでは、DARSを促進できなかった。以上の結果は、このDAF1と協同して機能する因子(DAF2)の存在を示唆する。現在は、DAF2の同定を目指し、DAF1存在下で、DARSを促進する因子の探索を行っている。
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