本研究ではアポトーシスといった個々の細胞内で生じる細胞現象が、いかにして石灰化、特に血管の石灰化に結びつくのか検討すると共に、血管の石灰化メカニズムの解明を目指すことを目的としている。平成20年度は、平成19年度に作成したアポトーシスプローブおよびそれに関する基盤技術を利用して、実際の単一アポトーシス細胞内におけるcaspase-3の酵素活性検出を試みた。 通常アポトーシスの検出はDNAの断片化あるいはcaspase-3の活性を検出することで行うが、これらは生細胞での検出を目的としておらず、本研究における細胞レベルでのアポトーシスと組織レベルの石灰化を同一培養系で直接観察する事は困難である。そこで、培養しながら単一細胞のアポトーシス、つまりはcaspase-3の活性を低侵襲にかつ細胞特異的に検出する方法の開発が必要となる。 具体的には、昨年度開発したcaspase-3活性を固相表面で定量できるFRETタンパク質を、直径400nmにまでFIBにて先鋭化したAFM探針(ナノ針)にMPCポリマーを介して特異的にかつプローブ活性を保ったまま固定化することに成功した。こうして作成したアポトーシス細胞に対するナノ針プローブを、既にアポトーシスを誘導した単一細胞内に低侵襲に挿入し、ナノ針上でcaspase-3の活性を検出した。アポトーシスを誘導した単一細胞内において、ナノ針上に固定化したプローブがcaspase-3に応答することを確認し、さらにナノ針プローブを細胞から引き抜くことによって、微量な応答プローブの断片以外の大部分を、細胞から回収することに成功した。 つまり、単一細胞内のcaspase-3活性を低侵襲にかつ特異的に検出するアポトーシス検出系の開発に成功した。
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