研究概要 |
小胞体膜結合性転写因子ATF6は、小胞体に高次構造が異常な変性タンパク質が蓄積すると、小胞体からゴルジ体に移行して活性化する。ATF6の活性化機構においては次ATF6がどのように変性タンパク質の蓄積を感知し、小胞体から出芽するのかが重要であるが、その分子機構は良く分かっていない。本年度では、変性タンパク質の蓄積に応答したATF6の小胞体からの出芽機構を明らかにするために、ATF6の標的遺伝子産物を対象にATF6結合タンパク質を探索した。その結果、p45を新規ATF6結合タンパク質として同定することに成功した。p45はC末端側に膜貫通領域を持つ1回膜貫通型タンパク質であり、細胞内に過剰発現させると小胞体に局在した。アミノ酸配列情報から、p45はN末端領域の大部分が小胞体内腔に配向していると予想される, 興味深いことに、免疫沈降法による解析の結果、通常の細胞内ではp45とATF6の結合は見られないが、小胞体に変性タンパク質を蓄積させると、両者は速やかに結合することが分かった。これらの結果は、p45がATF6の出芽過程に関与していることを強く示唆している。遺伝子データーベースを用いた解析から、p45は進化的に広く保存されており、これまでのところ、ATF6が存在する全ての生物種にp45が見い出されている。変性タンパク質の蓄積に応答してATF6と結合する小胞体タンパク質はこれまで報告されておらず、本研究によるp45の同定は、ATF6の小胞体出芽機構の解明に大きく貢献するものと期待される。
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