マイクロRNA(miRNA)は、植物から動物まで広く保存したタンパク質をコードしない22塩基程度のスモールRNAで遺伝子発現を翻訳レベルで制御する機能を持ち、近年、発生や分化、癌、アポトーシスといった生命現象に広く関与することが明らかにされつつある。これまで多くの研究がタンパク質をコードする遺伝子に着目したものであることから、miRNAの機能解明は複雑な生命現象への理解に必須のものであると考えられる。本研究では、細胞分化に関与するmiRNAの機能の解析を目的とし、培養条件により骨分化・筋分化を誘導できる性質を持つマウスC2C12細胞を用いて研究を行った。マイクロアレイ解析により発現が共通して減少する一群のmiRNAを同定できた。これらmiRNAの中には細胞増殖を正に制御することが報告されているmiRNAが多数含まれており、分化に伴って細胞増殖が停止することによく合致した。一部に関してはC2C12細胞においても増殖を正に制御することを確認した。また骨分化に伴って発現が亢進するmiRNAを数種同定したが、その内の一つはコーディング遺伝子のイントロン中にコードされていた。これを親遺伝子と呼ぶが、その親遺伝子も発現が亢進することを確認した。現在その発現機構の解析を続けている。一方、筋分化に伴って亢進するmiRNAはすでに報告されており、本研究でもそれらmiRNAが同定できた。C2C12細胞は筋分化を誘導した際、一部分化せず休止した細胞も存在する(サテライト細胞に相当すると考えられている)。筋細胞と休止細胞を分離し解析したところ、筋特異的miRNAは休止細胞ではほとんど発現していないことが分かった。さらに休止細胞でのみ発現が見られる遺伝子が、筋特異的miRNAの標的配列を持ち、miRNAの標的遺伝子となることを見出した。現在、休止細胞と分化細胞の違いに着目してさらなる解析を行っている。
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