細胞周期M期特異的な微小管動態を生み出すXMAP215/TOGとその制御因子TACC3およびAurora Aの機能と制御機構を中心に解析をおこなった結果、以下に述べるような新たな分子機構が見出された。まずTACC3をM期特異的にリン酸化し活性化するAurora Aが、低分子量Gタンパク質Ranの標的として知られていたTPX2 (Targeting Protein for the Xenopus Kinesin xklp2) によって活性化され、Aurora Aによってリン酸化されたTACC3の機能を通して微小管重合を促進し減数分裂時のM期スピンドルを形成することがマウス受精卵における解析によって明らかになった。この結果は、中心体に依存しない減数分裂時のスピンドル形成においても、XMAP215-TACC3複合体の活性が必要であることを示した最初の例であり、減数分裂と有糸分裂に共通するスピンドル形成時の微小管重合のメカニズムを明らかにした点で重要である.またヒト培養細胞の系において、LAP (Localization and Affinity Purification) タグ標識したXMAP215/TOGを安定に発現させる細胞株を用いて、免疫沈降および質量分析により新たな相互作用因子を探索した結果、TACC3と同じタンパク質ファミリーTACC (Transforming Acidic Coiled-Coil protein) に属するTACC1とTACC2が同定された。さらに部分欠失断片をin vitroで発現させた精製タンパク質を用いた解析から、XMAP215/TOGの微小管伸長活性の亢進には、TACC3のカルボキシル末端に保存されたコイルドコイル領域のみで十分であることを明らかにした.このコイルドコイル領域はTACCファミリーに属するタンパク質全てに共通して高く保存された領域である.これらの結果はTACC3のみならずTACCプダミリータンパク質全体がXMAP215/TOGの活性化因子として働いている可能性を強く示唆しており、TACCファミリーの機能の進化的意義を考えるうえできわめて重要である。
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