研究課題
申請者は、哺乳動物のM期脱出および細胞質分裂におけるLats2の役割について研究を行なってきた。ほぼ研究計画どおり順調に進み以下の成果を得た。(1)Lats2のN末端領域にAurora-Aによってリン酸化される全ての部位(3箇所)を同定した。これらの部位に対する3種類のリン酸化特異的なポリクローナル抗体の作製に成功した。(2)この精製抗体を用いて、決定した部位の細胞周期におけるリン酸化時期を調べたところ、これらはいずれもM期特異的に高度にリン酸化されることを見出した。さらに、リン酸化されたLats2のM期進行における細胞内局在を調べたところ、非常に興味深いことに、3箇所のリン酸化は互いに異なる分裂装置上への局在を示した。つまり、リン酸化のひとつは中心体と中央体に、もうひとつは中心体から紡錘体に、残りのひとつは核内からセントラル・スピンドルに移動し、中央体に局在した。これらの結果は、Aurora-Aによる複数のリン酸化がLats2の多様な局在を制御していることを示唆している。同時に、この結果は一種類の蛋白質の局在が異なる部位のリン酸化によって別々の分裂装置上に仕分けされる初めての例である。Aurora-Aの多彩な機能を解明する上で極めて重要な意義を持つと考えられる。(3)各リン酸化部位のアミノ酸置換変異体を作製し、各リン酸化の生理的機能を調べたところ、2箇所のリン酸化がLats2蛋白質の安定性に寄与していることを見出した。(4)siRNA により内在性Lats2をノックダウンすると細胞質分裂の異常が観察された。同様に、自作したLats2欠損細胞(Lats2^<-/-> MEF)においても細胞質分裂の異常が認められたことから、Lats2 は細胞質分裂の進行に重要な役割を果たしていることが示唆される(「研究発表・成果」参照)。現在、その分子経路の探索と解析を行っており、Lats2の標的を1つ同定している。
すべて 2007 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/molgenet/