研究概要 |
DNA損傷によってさまざまな遺伝子の発現が変化する。実際,紫外線を照射後,発現量が3倍以上変化する遺伝子は全遺伝子の4%にもおよび,このうち90%は転写が抑制される遺伝子である。DNA損傷後,転写が活性化される機構についてはp53やNFkBのような転写活性化因子の解析から多くの知見が得られているが,転写が抑制される機構はほとんど知られていない。われわれは転写に重要な役割を果たすヒストンの修飾がDNA損傷後どのように変化するかに注目した。Chk1はDNA損傷時にセントロソームに移行し,Cdc25をリン酸化することでCdk1の活性を抑制するという重要な機能を持つが,DNA損傷非存在下においては約20%がクロマチンに結合している。このクロマチンに結合しているChk1の機能はこれまで知られていなかった。今回我々の研究により,クロマチン上のChk1によるT11のリン酸化の制御によって,DNA損傷後の転写抑制が誘導されることが分かった。
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