核膜孔複合体は、数個のサブコンプレックスから形成されることが近年明らかになっている。このため、私たちは各サブコンプレックスに含まれる代表的な蛋白質に蛍光タグを付け、HeLa細胞内で発現させて安定発現株を作製した。これらの安定発現株では核膜孔がラベルされ、そのダイナミクスをライブ観察することが可能となった。とりわけ、複合体の中で最も安定に存在するNUPl33-YFPの発現株では、488nmレーザーをもちいて核膜表面のある核膜孔領域をbleachすることができ、新たに形成された核膜孔を可視化できるようになった。この手法と細胞周期の阻害剤を組み合わせることによって、間期の核膜孔形成が、細胞周期によって厳密にコントロールされていることが示された。 上記のような、核膜孔形成過程と核構造の関係を調べるためには、複数の蛋白質を同時にラベルする必要がある。このため、2種類以上のcDNAを生細胞へ効率よく同時導入し、安定して共発現させるシステムは必要不可欠である。私たちは、ゲノム上でパーティション(区画化)の役割をするインスレーター(cHS4)を用いて、タンデムにつないだcDNAの安定発現システムを構築した。さらにこのシステムを用いることによって、このcHS4領域に、ゲノムを束ねる機能をもつコヒーシン複合体が結合していること、さらにはコヒーシン複合体がゲノム上の転写単位の区画化に重要な働きをすることを明らかにした。
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