核膜孔複合体は、30種類のポリペプチドから構成される核膜上の巨大な超分子複合体である。この核膜孔複合体が、核膜上でどのように形成されるのかは未だなぞのままである。核膜孔複合体は、数個のサブコンプレックスから形成されることが近年明らかになっている。このため、私たちは各サブコンプレックスに含まれる代表的な蛋白質に蛍光タグを付け、HeLa細胞内で発現させて安定発現株を作製した。これらの安定発現株では核膜孔がラベルされ、そのダイナミクスをライブ観察することが可能となった。とりわけ、複合体の中で最も安定に存在するNup133-YFPやNup107-YFPの発現株では、488nmレーザーをもちいて核膜表面のある核膜孔領域をbleachすることができ、新たに形成された核膜孔を可視化できるようになった。この手法と細胞周期の阻害剤を組み合わせることによって、間期の核膜孔形成が、細胞周期によって厳密にコントロールされていることが示された(投稿準備中)。走査電顕観察では、増殖期細胞において、核膜孔の形成過程らしき前駆体構造も得られている。このような前駆体は脳のプリキンエ細胞など、分化細胞では観察されなかった。さらに興味深いことに、細胞周期の阻害剤によって、間期の核膜孔の形成は阻害されたが、細胞核の成長は阻害されなかった。このことは、細胞核の構築と、その核膜上にある核膜孔の構築が異なるメカニズムで制御されていることを意味している(投稿準備中)。
|