研究概要 |
本年度は、ウニ幼生の左右非対称性の確立における割球の影響を明らかにすることを目的として実験を行った。特に、これまで幼生の左右非対称性確立機構に関して報告のなかった正形類ウニのサンショウウニを用いて、16細胞期に形成される小割球が、幼生の成体原基の形成方向を決定する能力を持つか否かについて、割球除去実験により解析を行った。その結果、16細胞期の小割球除去胚由来の幼生の一部において、本来、幼生の体の左側に形成される成体原基が、右側に形成されるという攪乱がみられた。しかし、この攪乱の程度は、これまで研究代表者が解析を行った種の中で中程度であった(Kitazawa and Amemiya,2007;北沢、未発表)。また、他の割球に対する除去実験では、多くの場合、ほとんどの幼生が、正常に成体原基を形成した。つまり、本種では、成体原基の形成方向の決定は、16細胞期の小割球にあまり依存せず、その方向は、16細胞期には既に決定していることが推測された。この結果を踏まえ、より発生初期の胚に対して割球分離実験を行い、それぞれの割球由来の幼生を飼育した。その結果、半胚由来の幼生においても、前述の実験と同程度の攪乱が確認された。以上の結果より、サンショウウニでは成体原基の形成方向が、他種よりも早期に方向付けられている可能性が考えられる。また、ウニの系統により、小割球の子孫細胞が持つ、幼生の左右極性を決定する能力の程度が異なることが明らかとなった。
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