これまでの研究代表者の研究により、ウニ幼生の左右非対称性の確立に、16細胞期に形成される小割球の子孫細胞が細胞間相互作用を介して影響していることが、数種のウニを用いて明らかにされてきた。その研究において、種により小割球が持つ左右非対称性決定能力の程度に違いがあることが明らかとなり、本年度は、小割球の左右非対称性決定能力が他種に比べて中程度のサンショウウニを用いて、幼生の左右非対称性確立に関与している割球の探求と、既知の左右非対称性攪乱物質の影響について解析を行った。本種では16細胞期以前に幼生の左右非対称性が確立することが昨年度の研究により示唆されたことから、まず、2細胞期の半胚及び4細胞期の1/4胚を作成し、これらの胚由来の幼生の成体原基形成方向を確認した。どちらの実験においても、16細胞期の小割球除去よりも成体原基の形成方向に攪乱がみられ、本来左側に形成される成体原基が右側に形成された個体が増加した。また、2細胞期の半胚を対として飼育した場合、左あるいは右側に成体原基を形成した対も確認された。次に、これまで幾つかのウニの種の幼生の左右非対称性を攪乱することで知られている薬剤のサンショウウニ胚への影響について調べた。H^+/K^+-ATPアーゼの阻害剤であるオメプラゾール及びランソプラゾールで処理を行ったところ、他種と同様に両側に成体原基を形成する個体が増加した。このことから、サンショウウニでは、左右非対称性確立に対する割球の影響は初期卵割期に作用し、これとは独立して、細胞内へのイオン流入も左右非対称性確立に影響をもたらしていると考えられた。
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