本研究の目的は脊椎動物の進化研究に重要とされていながらも、100年間ほとんど報告の無いメクラウナギ類の受精卵を入手し、神経堤細胞の発生過程について記述し、脊椎動物におけるこの細胞の進化を探るところにある。本研究初年度に行った実験では、Sox9遺伝子などあわせて4つの遺伝子を用いた発現の解析から、この生物にも脱上皮化し移動する神経堤細胞が存在することが確認された。この結果から、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類および顎口類の全ての共通祖先においてすでに神経堤細胞が存在していたことを示唆する結果となった。よって、本年度は前年度の結果をさらに確認するべく、更なるヌタウナギ胚の採集とそれを用いた遺伝子の単離および発現の解析を行った。その結果、前年度に引き続き、水槽飼育環境下において1粒の受精卵が得られ、遺伝子単離用の材料としで供することが可能となった.また、前年度に得られた胚体は本研究の予備実験の段階で得られた胚体に対して発生段階が進んだものであったため、神経堤細胞の派生物である軟骨や末梢神経系の観察を試みることが可能となり、この動物の系統学的位置づけを考える上で重要となる知見が得られた.上記の一連の成果を報告するべく、20年度に国内で開催された日本動物学会、魚類学会、進化学会、および米国ボストンで2009年1月3日から6日までの間で開催されたSICB Annual Meeting 2009において発表を行った。
|